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日常生活を見つめ直し、本当の幸せと地域とのつながりを考える 〜「生活哲学学会」設立記念シンポジウム レポート〜

(2016/12/26)

生活哲学学会設立シンポジウムには約150人の参加者が集まりました

日常生活から人と地域の未来を考える場として11月1日に設立された一般社団法人 生活哲学学会。設立を記念しさまざまな分野から意見交換を交わすシンポジウムが行われました。(取材・文/工藤千秋 取材協力・写真提供/一般社団法人 生活哲学学会

生活を見直すことで、自分らしい生き方と地域再生を実現

 生活哲学。耳慣れない言葉ですが、生活哲学学会の設立にあたり、考えられた造語です。

 生活哲学学会では、生活に関する学びの場、生活の経験や知恵、技術を身につけてそれぞれの活動に活かす場として、講演会やさまざまなプロジェクトを用意。生活哲学を共有したり、先人の生活の知恵の研究、さらには生活・地域ファシリテーターの育成などを行っていく予定です。

辰巳渚さん
一般社団法人生活哲学学会代表理事。
一般社団法人家事塾代表理事。文筆家。生活や人生設計について幅広い年代に向け提言。著書に『「捨てる!」技術』ほか多数。

 代表を務めるのは『捨てる技術』などの著者で家事塾の代表でもある辰巳渚さん。辰巳さんは「2008年から始めた家事塾で、“家のコトこそが生きるコト”とし、これからの生き方はひとりひとりの生活にもとづいていると伝えてきました。その活動をより社会的なものに広げていきたいと、生活哲学学会を設立しました」と設立経緯を語ります。

 生活哲学学会では、生活に関する学びの場、生活の経験や知恵、技術を身につけてそれぞれの活動に活かす場として、講演会やさまざまなプロジェクトを用意。生活哲学を共有したり、先人の生活の知恵の研究、さらには生活・地域ファシリテーターの育成などを行っていく予定です。

自己教育力を高める。それもひとつの生活哲学

 生活哲学学会会長を務めるのは、刑法学者で元早稲田大学総長の西原春夫さんです。

 西原さんは「自己教育力の源泉としての人生の目標」をテーマに講演。“自己教育力―自分を高めようという気持ち”は、興味や関心を持つことへの出合いがきっかけで育つもの。その興味・関心が目標となり、人生で大きな意味を持つと言います。

 例として西原さんは自身の体験の中で、14歳で死別した母親が残した言葉の影響について語ります。「母は最期に“立派な人になってね”と言い残して亡くなりました。立派な人とはどんな人なのか? 最初に浮かんだのは地位や名誉がある人ですが、それが本当に立派な人に通じるとは限りません。その答えはすぐに見つからなくとも、その時その時で考えうる立派な人になろうと決めて、私はこれまでの人生を送ってきました」(西原さん)。

 以来、立派な人になるべく、知識、経験、ものの見方、人間関係などさまざまな努力を重ねていく中で、立派な人には「これでいい」というゴールがないことに気づいたと言います。

「だからこそ、私はこれまでずっと努力し続けることができたのだと思います。もし母から『偉い人になってね』と言われたら、早稲田の総長になった時点で努力をやめてしまったかもしれません。そういう意味では、“立派な人”というのは、私にとって最もレベルの高い人生の目標になりました」(西原さん)。

 さらに、人の成長に役立つ言葉には“適切なタイミング”が重要と言います。普段の生活の中で、いくら「立派な人になりなさい」と語りかけたところで、子どもの胸には響かない。「その言葉が活きるチャンスがあるはず。親がそれを見つけるのも、またひとつの生活哲学」と西原さんは語ります。

 そのうえで、人生の目標について、「たった1度きりの人生であるからこそ、親や先祖から与えられた能力を最大限発揮し、自分がこの世に存在する意義を広げていくこと。それこそが人間の生きる目標になる」と締めくくりました。

生活の知恵を共有することで、新しい暮らしや子育ての指針を

 続いて開かれたパネルディスカッションでは音楽家の大友良英さん、生活哲学学会顧問・ダンコンサルティング代表の塩見哲さん、スポーツバイクアドバイザーの竹谷賢二さん、生活哲学学会常務理事・次世代社会研究機構代表理事の西田陽光さんらとともに、村上富美ecomom編集長も登壇。

 生活哲学という言葉と生活哲学学会の考案者でもある常務理事の西田さんは、「日常生活を再認識したり、それぞれが経験や知恵を分かち合うことで、その人の生き方だけでなく地域再生の足掛かりになるのが生活哲学。それを実践する場をつくっていくことが大切」と言います。

 そのうえで、先人の知恵に学ぶことがどのように生活哲学に結びついていくのかを、次のように話しました。

「大切なのは、何気ないと思っていた先人の日常生活を改めて見直し、洞察してみること。当たり前と思うことの背景にある独自の豊かさ、やりくり、智慧などに気づき学ぶことができます。それによって、日常生活がいかにその人らしさを活かせる『場』であることに気付かされるはずです。

 私たちはメディアが採り上げる一般論に振り回されがちですが、人はそれぞれの事情の中で生きています。一般論が自分のケースに当てはまらないことは往々にしてあるもの。そんな時には、地域や身近な先輩のリアルな経験知を参考にしたほうがいい。その人その人にあった豊かさのある生活をもう一度取り戻してほしいですね」(西田さん)

 生活哲学学会顧問で経営コンサルタントの塩見哲さんは「生活とは、目の前のことを一生懸命生きること。そうやって、今を大事に生きていく中で、周りの人たちになんらかのよい影響を与えられたら、ということを大切にしている」と言います。

「ムリをせず自分のできる範囲でやることで、続けていくことが大事。そのうえで、今、世の中で薄れているような地域との関係性を重視したり、個々の生活を大切にした消費者サイドの視点に立つことで、ビジネスとしても“生活哲学”の可能性が広がって行くのではないでしょうか」(塩見さん)

 自身の子育てと仕事を両立してきた経験から、人生には優先順位が必要と語るのは村上編集長です。

「私たちはさまざまな“こうしなければならない”から解放され、これからは新しい指針を一緒に考えていくべき。そのひとつとして、生活の知恵を共有が役立つと思います」(村上編集長)。

 家庭や地域社会とのかかわりの中で、もう一度、自分たちの生活という足元を見直してみる。そこから本当の幸せや、自分らしく生きるヒントが見つかるのかもしれません。


(2016年12月26日)
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