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NECがバイオプラスチックで“漆ブラック”、傷に強く蒔絵も特殊印刷で再現

2018年2月8日(木)

 NECは2018年2月6日、以前に開発した漆器のような黒を実現したバイオプラスチックの性能を、さらに向上させたことを発表した。漆芸家の下出祐太郎・京都産業大学教授や外部の素材メーカーなどと共同し、傷に強い耐傷性の強化を図ったほか、蒔絵(まきえ)のイメージを再現できる高度な印刷技術を実現した。職人の手仕事による漆器や蒔絵に比べ、射出成型や印刷で製造できるため、大量生産が可能になる。製造コストは、一般的な漆器の約10分の1という。“漆ブラック調”のバイオプラスチックとして、高級家電や高級建材、高級自動車の内装など、これまではコストの面で漆器や蒔絵に手が出なかった市場にアピール。NECは技術ライセンスを販売し、実際の製造などはパートナーと連携。国内外のデザイナーにも広く提案していく。

 「2016年に最初の開発を発表して以来、多くの引き合いがあったものの、耐傷性を指摘される場合が多かった。今回の取り組みで、実用化に近づいた。漆は海外でも人気のため、例えば2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックによる外国人観光客向けの市場も期待できるだろう。もちろん、本物の漆器を代替するものではないが、高装飾が要求される新しい市場を開拓していきたい」(NEC IoTデバイス研究所の辻正芳・研究部長)。

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漆器のような黒を実現したバイオプラスチック。NECが漆芸家の下出祐太郎・京都産業大学教授や外部の素材メーカーなどと共同開発した。以前に比べて耐傷性を強化し、蒔絵(まきえ)のイメージを再現できる高度な印刷技術を実現

 漆器が持つ独特な漆黒の光学特性を詳細に分析し、草や木など非食用植物を原料にしたセルロース樹脂に光の反射や着色性を調整する添加剤を配合することで、漆黒に近いレベルの光沢を備える素材を実現している。だが、これまでは表面をこすると、細かな凹凸や白濁などが発生し、漆のようなブラックの光学特性(低い明度、高い光沢度、漆特有の深さと温かさ)が低下するという課題があった。そこで従来の添加剤の内容や配合を見直し、表面の摩擦を低減しつつ、光学特性を維持するようにした。摩擦試験の結果、従来は半減した光沢度が、今回は高い数値で保持され、一般的なプラスチックと比べてもそん色のない高いレベルを達成したという。

 印刷技術では、まずデジタル画像処理で下絵を忠実に再現。特殊印刷に強いメーカーと組んで、インク組成や着色成分、印刷条件を最適化したほか、特殊な金属粉で高品位な金色を表現している。これを重ね塗りすることで、通常は厚さ100μmの印刷を、今回は250μmと厚塗りできた。肉厚になり、本物の蒔絵のような感触を得られそうだ。

 開発に加わった下出祐太郎氏は、「今回の技術は専門家のレベルで見ても85点と高い。海外も漆には注目しており、日本の代表的な技法として歴史的にも評価されている。日本で伝統工芸の職人が少なくなる中、新しい技術によって、まずは漆の良さをもっと認識してもらえるようにしたい」と話す。(大山繁樹)

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蒔絵のイメージを再現するため、特殊な金属粉で高品位な金色を表現
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左の画像の花びら(右上部分)を拡大した画像。花びらが重ならず、きれいに分かれている

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