クローズアップ

「国境は必然か」、チームラボの猪子氏が語る個展の真意

ロンドンのPace Galleryで8作品を展示

2017年3月28日(火)

 2017年1月25日から3月11日までロンドンのPace Gallery(ペース・ギャラリー)にて、新作を含む8作品を紹介する個展を開催したチームラボ。今回のタイトルは「teamLab:Transcending Boundaties(境界を超越する)」だ。チームを牽引する代表の猪子寿之氏に、今回の作品テーマなどについて聞いた。            (聞き手は角尾舞/ライター)

日経デザイン(以下ND):今回の展示タイトルにも関連する「境界線をなくす」というテーマは、最近のチームラボ作品のシリーズ名でもあります。このテーマに行き着いたきっかけは何でしょうか。

猪子寿之氏(以下、猪子):そもそも世界には境界なんてないはずなのに、人は当たり前にそれがあるかのように振る舞っています。それを「何でだろう?」とずっと思ってきました。人と人、国と国、何でもそうですけれど、「独立している」ことと「境界がある」ことは同義のように語られています。独立した国家間には必ず国境がある。そうしないといけない、と思っているフシがあります。

 この原因はもしかしたら、世界を「切り取る」という西洋で生まれたパースペクティブなものの見方に人々は影響を受けているためではないか。そう感じて、10年くらい前は日本の空間認識の方法を論理的に整理した「超主観空間」と呼ぶべき映像をつくっていましたが、今は「境界がない体験」そのものをつくりたいと思っています。今回の展示も、2016年夏に開催した「DMM.プラネッツ Art by teamLab」も、それが元々のアイデアです。

2016年夏に東京・お台場で開催された「DMM.プラネッツ Art by teamLab」。大規模な体験型のアートインスタレーションは、最大6時間待ちとなるほどの人気を博し、米メディアCNNの「2016's most visually inspiring moments(2016年最も感動した視覚的瞬間)」の1つにも選ばれた ※画像提供:チームラボ(以下同じ)
猪子:例えばゴッホの2つの絵画「ひまわり」と「星降る夜」。この作品間には境界があります。でもゴッホの頭の中にあったときは、つまり1枚の絵というかたちになる前のコンセプトやアイデアの段階では、きっともっとあいまいだったと思うんです。現実世界に存在させようとした瞬間に、キャンバスや額縁といった物質が境界を産んだだけかもしれません。人間の脳の中に境界は存在していませんから。

 物質を必要としないデジタルアートは、求めたいアウトプットに対して、とても相性がよいんです。今回の場合、全部で8作品のうち、1つ目の部屋に6つの作品がありますが、それぞれが互いに影響を与えていて、作品同士の境界は極めてあいまいになっています。でも1つひとつのコンセプトは全く違うし、独立した作品であることには変わりはありません。境界があいまいでありながらも、独立し続けているという空間をつくりたかった。

ND:「境界があいまいでも、独立した状態がなくなることはない」ということは、何も失うものはないということを示したかったのでしょうか。

猪子:そうです。もしかしたら、国境が明確であることは必然ではないのかもしれない。自分と他人との境界線がはっきりとあることは、自分自身の存続にとっても重要ではないかもしれない。境界がなくても、作品が作品としてあり続けるように。

ロンドンのペース・ギャラリーでの個展では、「ルーム1」に6つの作品があるが、それぞれの作品や鑑賞者のふるまいがインタラクションを生み続けている。新作である「Universe of Water Particles, Transcending Boundaries」では、滝が天井から壁をつたい床まで水流を描き、人がいるとその流れが止まり、そこに花が咲く、という様子を描いている

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