クローズアップ

アーキテクチュアル・シンキング アイデアを実現させる建築的思考術

「アーキテクチャー」を考え、新たな映像表現につなげる

第2回●tha ltd.代表取締役・デザイナーの中村勇吾氏(後編)

本誌2017年5月号から連載された「アーキテクチュアル・シンキング アイデアを実現させる建築的思考術」。建築系の出身でありながら、現在は建築系以外の分野で活躍するデザイナーやクリエーターなどの方々にインタビューし、発想の原点を探っていく。今回はデジタルクリエーターとして知られる、tha ltd. の中村勇吾氏の後編。(前編はこちら

西澤:建築のデザインを考える場合、建築を成り立たせるための柱や梁(はり)などの構造体がある上で、付加的に装飾を張り付けるようなケースがある一方、逆に構造自体が表現の主体となるようなケースがあります。中村さんのお仕事にも、そういった例はあるのでしょうか。ウェブでも、構造はむき出しだけど美しいものとか。

中村勇吾氏(なかむら ゆうご)●ウェブデザイナー/インターフェースデザイナー/映像ディレクター。1970年奈良県生まれ。東京大学大学院工学部卒業。多摩美術大学教授。98年よりウェブデザイン、インターフェースデザインの分野に携わる(写真:名児耶 洋)

中村:私の分野でも明確にアーキテクチャーという部分はあります。コンテンツの面白さとか形の美しさがある一方で、フェイスブックの「いいね!」ボタンのように、いろんな人とつながるコミュニケーションの仕組みに意味がある場合もある。「いいね!」ボタンのデザインがいいかどうかではなく、そういった仕組み自体を考えることが重要になるわけです。これもアーキテクチャーと言うべき点でしょう。

西澤:アーキテクチャーを、建築でいう「構造」ではなく、「仕組み」とか「仕掛け」の意味で使っているんですね。

中村:ネットワークの世界では、アーキテクチャーってすごく強制力を持つものなんです。何らかの仕掛けをネットワークに施せば、使用に制限をかけることも可能ですから、人間の行動を規制する存在になるかもしれません。建築にも似たような考え方があって、例えば人間の行動を誘導するような家の間取りを意識してつくることもできる。そうした意味でのアーキテクチャーは共通しますね。私の場合は、新しい試み、新しい面白みをつくるためのアーキテクチャーと言えるでしょう。

西澤明洋氏(にしざわ あきひろ)●ブランディングデザイナー/エイトブランディングデザイン代表。1976年滋賀県生まれ。企業のブランドから商品・店舗開発など幅広いデザイン活動を行う

西澤:アーキテクチャーの概念をデザインの世界に持ち込んで、新しいものをつくろうとされていると思いますが、それが実際に具現化したといえるお仕事としては、どんなものがありますか。

中村:以前の例ですが、環境問題を考えるサイトをつくったとき、画面の「木」をクリックすると枝葉がどんどん伸びていくとともに、植樹のために募金する仕組みにもなっているというプロジェクトを手がけたことがありました。また、あるサイトの画面内で、訪れたユーザーがどのようにマウスを動かしたかを可視化できるようにして、その動きが自動的にサイトの使い方のガイド代わりになる仕組みにしたケースもあります。

 映像系ではユニクロのUTブランドのTシャツのプロジェクトでしょうか。そのとき初めてCM も手がけたのですが、そんなことやったことがなかったので、CMの映像が生まれる仕組みをCMにしたらどうかと。東京やニューヨーク、ロンドンなどでUTのTシャツを着た400人ぐらいの人たちの声と映像をサンプリングし、それがそのままCMになるというものでした。

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