クローズアップ

第7回「クリエイティブのABC」: 2015年8月号

コンセプトづくりも踏まえ、グラフィックの新領域を開拓

KIGI(キギ)代表アートディレクター・クリエイティブディレクターの植原亮輔氏、同アートディレクター・デザイナーの渡邉良重氏

ブランディングデザイナーの西澤明洋氏が聞き手となり、クリエーターの創造的思考や行動を公開インタビューで探る「クリエイティブのABC」(企画協力は青山ブックセンター)。今回の相手は、グラフィックからプロダクトのデザイン、さらにはブランド開発なども手がけているKIGI(キギ)の植原亮輔氏と渡邉良重氏。

西澤:今回はKIGI(キギ)の植原亮輔さんと渡邉良重さんに、グラフィックデザインの新しい考え方をお聞きします。お二人とも日経デザインでも連載されている宮田識氏のデザイン会社DRAFT(ドラフト)から独立し、その後は滋賀県の職人さんと共同で「KIKOF(キコフ)ブランドを立ち上げ、陶器や木工家具などを商品化されています。さらに沖縄のプロジェクト「琉Q」でも、商品の商品化から宣伝まで手がけるなど、グラフィックの領域を越えた新しいビジネスにも次々に取り組んでいます。まずは、お二人がどういう経緯でデザイン業界に入ってきたのかを教えてください。

渡邉:私は、地元の山口大学という一般大学の教育学部を卒業したので、実はデザイン専門ではありません。でも小さいころから絵を描くのが好きでした。実家は本当に田舎で、周りは10軒ぐらいしかない集落といった感じのところです。近くのバス停まで3キロもありました(笑)。このまま、ずっと山口県にいるのだろうと考えていたので、地元で働くとするなら手に職が欲しかった。

 地元の山口県で男性と同じぐらいに給料をもらえる職業と言えば、まず公務員が思い浮かびました。それなら市役所や県庁で事務職をやるより、学校の美術の先生がいいなと思ったのです。美術の先生って自分の部屋を持っている例が多いですよね。そこで絵を描く合間に教えようかなみたいな、そんな不純な動機で教育学部に行きました。でも大学3年のときに教育実習を経験し、全く自分には合わないなと感じたので、デザイナーになりたいと思ったのです。育実習が終わった後のリポートの1行目に、「私は先生になるのをやめました」と書いたほどです(笑)。その後は親の説得や、いろいろなことがあって結局、筑波大学の研究生になりました。聴講生みたいなものです。東京とか就職とか、まったく未知の世界だったので親を安心させるためもあり、まず国立大学に行って2年間、ほか学生に交じって授業を受けたのです。そうした経験や、デザイン会社などを経てドラフトに入りました。

西澤:渡邉さんがドラフトに入社したきっかけは何ですか。

渡邉:ある雑誌に、ドラフトの前身である宮田識デザイン事務所が掲載されているのを偶然、見ました。私は宮田さんという人をまったく知らなかったのですが、そのときに掲載されていた1枚のポスターを以前見たことがあり良いなと思っていたので、この会社に入りたいと思いました。

西澤:植原さんは、どういう経緯でドラフトに入られたんですか。

植原:僕は普通に、就職活動がきっかけです。在籍した多摩美術大学ではテキスタイルを学んでいましたが、本当はグラフィックに行きたかったんです。その思いは変わらず、就職活動では広告代理店も受けましたが落ちてしまいました。しかも僕らのころの多摩美のテキスタイルは、4年生なのに課題が出るので、就職活動どころじゃありませんでしたが、友人たちの就職が決まり始めてくると、こりゃやばいと自分も焦り出しました。ラフトの新人募集の広告を見たんです。僕もドラフトの名前は知りませんでしたが、「ドラフトの新人を募集します」っていうコピー。プロ野球の新人みたいでかっこいいかなと(笑)。それでドラフトについて調べると、自分が好きだった広告をつくっていましたし、ちょうど(渡邉)良重さんがJAGDA新人賞を受賞したばかりのときでした。スター?もいるし、僕も受けてみようと思ったのです。

渡邉:当時、私も植原を面接したんですよ。

西澤:そうなんですか。植原さんは当初、どんなお仕事をされていたのですか。

植原亮輔氏(うえはら りょうすけ:写真左)1972年、北海道生まれ。多摩美術大学(テキスタイル)を卒業し、97年~2011年までDRAFT(ドラフト)入社。渡邉良重氏(わたなべ よしえ:写真中)1961年、山口県生まれ。山口大学(教育学部)を卒業し、86年~2011年までドラフト。2012年にDRAFTのフランチャイズシステムにより、共同でKIGI Co.,Ltd.(キギ)を設立。作品集『キギ/KIGI』(リトルモア)を12年に出版。現在、キギで手がける仕事の他、DRAFT在籍時より携わってきたプロダクトブランド「D-BROS」のディレクターを務める。さらにアートディレクターとして、企業やブランド、商品などのグラフィックの仕事を手がけるほか、13年に洋服のブランド「CACUMA」、14年にプロダクトブランド「KIKOF」を立ち上げる。15年にKIKOFの仕事で東京ADC賞グランプリを受賞するなど国内外のさまざまな賞を受賞。キギを含む3つの会社の共同出資で、15年7月4日、東京・白金にオリジナルショップ「OUR FAVOURITE SHOP」をオープン。    西澤明洋氏(にしざわ あきひろ:写真右)エイトブランディングデザイン代表。ブランドから商品、店舗の開発など幅広いデザイン活動を行う。独自のデザイン開発手法により、リサーチからプランニング、コンセプトまで含めた一貫性のあるブランディングデザインを数多く手掛ける。著書に『ブランドのはじめかた』『ブランドのそだてかた』など。(写真:丸毛 透)

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