クローズアップ

第8回「クリエイティブのABC」 : 2015年9月号

テクノロジーで“かっけぇー”世界を創りたい

チームラボ代表、猪子寿之氏

ブランディングデザイナーの西澤明洋氏が聞き手となり、クリエーターの創造的思考や行動を公開インタビューで探る「クリエイティブのABC」(企画協力は青山ブックセンター)。今回の相手は、テクノロジーとアートを融合させた作品などを次々と送り出しているチームラボの猪子寿之氏。

西澤:チームラボは、テクノロジーとアートを融合させ、イベント向けのソリューション開発やサイトの提案などで注目されているほか、最近ではアーティスト「チームラボ」として、デジタル技術を活用したいろいろなアート作品を発表しています。メンバーにはデザイナーのほか、エンジニアや数学者といったスペシャリストも多く、「ウルトラテクノロジスト集団」とも呼ばれています。

 代表である猪子寿之さんも東京大学の工学部を卒業し、確率・統計モデルを学んだほかに、大学院では自然言語処理やアート関連を研究するなど、ユニークな経歴をお持ちです。チームラボは大学卒業後に設立されたそうですが、まずは創業の経緯をお聞かせください。

猪子:今でこそインターネットは当たり前ですが、僕が大学に入るために上京したとき、ちょうどインターネットが普及し始めた時代でした。まだ通信速度が遅くて、海外にある美術館のサイトを見るだけでも、1枚の絵を表示するのに15分もかかっていました。でも、その絵をパソコンで見た瞬間、とても感動したのを覚えています。

 これまでの情報は、既得権益というか、特定の人の管理下にあったのが、今後は自由に取ったり、発信したりできる時代になる。人類が解放されるみたいな、すごくロマンチックな気分になっていました。その瞬間、家にあったテレビを投げ捨ててしまったほどです(笑)。そんなとき、自分も卒業して就職しなきゃいけないと考えていたんですが、一方で自分には普通の就職は、とても無理だなとも思っていました。だって、社会に出るとなったら、朝に起きないといけないでしょう(笑)。

 当時の僕は、メールは読まないしメールも書けない、電話にも出られない。気が向いたときに何かをする、といった生活でしたから。もう人間としてダメなんじゃないかって。でも、僕が1人で社会に出るのは無理だとしても、別に社会との接点をつくればいいんじゃないかと。それは僕、個人じゃなく、チームで何か作って、その作ったもので社会と関係できるようにしたいと思ったのです。それでチームで何かをやるような会社、チームで新しい時代の新しいものを作る場所にしたいため、「ラボラトリー」を意味するラボを加えて、チームラボとしました。

西澤:最初はどんな仕事をしていたのですか。

猪子:テクノロジーのイノベーションか、アートで価値観が変わるようなことがいいなと思っていましたが、でも最初はよく分からなかったんですね。とにかく両方やろうと思って、初めはユーザーのデータを分析して次の購買活動につなげるレコメンデーションエンジンを開発したんです。情報が多様になっているから、そうしたシステムがあればと考えたのですがまったく売れなくて。アート的なものも作ったんですけど、もちろんまったく売れなかった。当時、オフィスを借りていたかな、自分のアパートでやっていたかもしれません。

西澤:そのときのメンバーは何人だったんですか。

猪子:僕も入れて5人でした。皆、エンジニアです。当時の僕は大学院にも行っていました。どうやって稼ぐか、イメージが全くわかず、大学院に行ったら奨学金をもらえるので、取りあえず2年間ぐらい生活できるじゃないですか(笑)。もうどうしていいか分からず、友人の会社のサイト構築などを手がけていました。今までサイトなんか作ったこともないのに、お金をくれるというから請け負いました。それが初めてお金をもらった仕事です(笑)。

 それを皮切りに、サイトを作る仕事がまずは来るようになって。次第に大規模なシステムを開発する機会も出てきました。レコメンデーションエンジンもずっと手がけていまして、最近になって売れています。

猪子寿之(いのこ としゆき)氏の略歴(写真左)●1977年、徳島市出身。2001年東京大学工学部計数工学科卒業と同時にチームラボ創業。「ウルトラテクノロジスト集団」のチームラボ代表。チームラボは、数学者やエンジニアなどデジタル社会のさまざまな分野のスペシャリストから構成されている。(写真:丸毛透)

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