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【ニュース&トレンド】: 2016年9月号

「無印良品」5人目のアドバイザリーボードに聞く

経営とデザイン

2016年9月14日(水)

「無印良品」を展開する良品計画は7月、テキスタイルデザイナーの須藤玲子氏を「アドバイザリーボード」のメンバーに迎えた。小池一子氏、杉本貴志氏、原研哉氏、深澤直人氏に続く5人目のアドバイザリーボードメンバーに、無印良品での役割を聞いた。

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須藤玲子(すどう・れいこ)●テキスタイルデザイナー。株式会社「布」取締役デザインディレクター。東京造形大学教授。英国UCA 芸術大学より名誉修士号授与。日本の伝統的な染織技術から現代の先端技術までを駆使し、新しいテキスタイルづくりを行う。作品は内外で高い評価を得ており、ニューヨーク近代美術館、東京国立近代美術館工芸館など、22 の美術館に永久保存されている。(写真:丸毛 透)

日経デザイン(以下、ND):無印良品と仕事をするようになったきっかけは?

須藤:2008年の春、突然でした。当時は社長でいらした金井(政明)会長から、「無印良品のファブリックのアドバイザーをしてもらえないか?」と打診を受けたのです。私は日本国内で染織の伝統技術と先端技術を使う小ロットの布づくりをしてきましたので、世界中でダイナミックに布づくりを行う無印良品との接点を見つけにくいと思いました。でも「無印良品もいずれは日本での布づくりをできたらいいね」という金井さんの一言に、「違うデザインのやり方があるかもしれない」と喜んでお引き受けしたのです。

 私自身は大学を出たのが1970年代半ばなのですが、1980年に無印良品が出来たときの衝撃はとても大きくて、私の「MUJI愛」はそのときから続いています(笑)。1984年に私たちがテキスタイルショップ「NUNO(布)」をスタートしたときは文房具も収納も無印良品でしたし、使うものは全部無印良品という決まりを作りました(笑)。私たちが作る布をどういう消費者に売りたいかという話をするときも、「無印良品を好きな人」「ストッキングをはかない人」「ブランド品を持たない人」みたいに決めて…。

 金井さんが私の活動に興味をもってくれたきっかけになったプロダクトがあります。NUNO が1995年から福井産地で作り続けている「釣り糸」を織物にした布です。その布で作ったバッグは当時も今もNUNOの人気商品の一つですが、そのバッグを持ち歩いていたのが伊東史子さん。「スローフード」というイタリアの雑誌の日本版編集長をしていた方で、伊東さんのバッグがある日、金井さんの目に留まったと聞いています。「そのバッグは何?」と。

 つまりこの布が金井さんと私が出会うきっかけになったのですが、モノだけではなくて、そこに伊東さんという伝える人がいたからこそ。彼女とはそれからずっと一緒に無印良品の仕事をしています。

ND:その後、さまざまな形で無印良品の商品開発に関わってらっしゃったわけですね?

須藤:生活雑貨のファブリックから関わり始めて、その後、衣服・雑貨にも関わるようになりました。衣服雑貨では、毎年テーマを決めて、1年目は「古代布・麻」、2年目は「今の布・化学繊維」、3年目が「人の生活と布の関わり」です。

 布を染め直したり、刺し子や継ぎを当てて補強したり、日本には昔から布を大切に長く使うための素晴らしい仕組みがいろいろありますね。私の子供の頃は、近所に染め屋さんがあって、古い反物を持っていくと、きれいに染め直してくれました。無印良品が始めた、お客さまから回収した衣服の中から、まだ着られるものを丁寧に選別して染め直して再販する「Re-Muji」は、こうした考え方から生まれた取り組みです。

 ファブリックや衣服に関して無印良品はどう考えればいいか、無印良品らしい取り組みとはどうあるべきか、といったことを考えて提案していく──それが私の役割だと思っています。

 2008年、小池(一子)先生から「オーガニックコットンについてちょっと話をしてほしい」と言われました。ちょうど東京造形大学のサステナブルプロジェクトで、学生たちとオーガニックコットンの栽培を始めていたときだったので、種まきから収穫、種取り、そしてチャルカ(インドの糸紡ぎ機)での糸紡ぎまでの過程と、大阪の大手オーガニックコットンの紡績工場の工程など、画像を交え、ぜひオーガニックコットンを使っていきましょう、と小池先生にプレゼンしました。

 無印良品は規模が大きいので、私の提案や考え方は到底伝わらないだろうと考えていたのですが、それがダイレクトに届いたようで、びっくりしました。不思議な会社です(笑)。無印良品が使うコットンは今ではほぼ100%がオーガニックです。

 無印良品のこういう動きが畑も土も変えるし、人々の生活も変えていくと思います。すべての企業が同じように動けるわけではないけれども、少なくとも無印良品は動く。だから世界中のクリエーターからMUJIは愛されるのですよね。

ND:今年7月に5人目のアドバイザリーボードメンバーになったわけですが。

須藤:はい、7月18日に初めてアドバイザリーボードミーテイングに出席しました。ドキドキして、前日は眠れませんでした(笑)。金井さんからは現場の声をアドバイザリーボードミーテイングに反映させてほしいと言われました。現場とは無印良品の開発の現場であり、生産の現場であると同時に、一消費者としての率直な声だと思います。

ND:無印良品が今後も健全に成長を続けるためには、何が必要だとお考えですか?

須藤:生産者との信頼関係ですね。2011年から「FOUND MUJI 」の取り組みの一環として、私たちは国内のテキスタイルの産地の工場、工房を30 カ所回りました。その中から2013年には「日本の布 vol.1」展として10カ所選んで、商品化につなげたのです。とても人気の展示会となり、今春には「日本の布 vol.2」へとつながりましたが、ある生産者が私たちの発注量にとても対応できない、「型紙」と「染めデータ」をすべて提供するので、ほかの産地で作ってもらえないか、とおっしゃるんです。染工場の財産である「型紙」を提供することは普通ありえません。それを「いいよ」と言わせてしまうのが、無印良品のすごさです。スタッフ一人ひとりの思いが相手に伝わるのだと思います。単なる発注者と受注者という関係を越えた信頼関係こそ、無印良品にとってかけがえのないものだと思います。

この記事は日経デザイン2016年9月号の一部です。もっと読みたい方はこちら

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