クローズアップ

「動きで色が変わる」電子ペーパーのバッグ

イッセイ ミヤケとソニーが素材の共同開発

2016年10月4日(火)

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©2016 ISSEY MIYAKE INC.
2016年9月末、ISSEY MIYAKEのパリ・コレクションのランウェイに、全く新しいバッグが登場した。ソニーと素材の共同開発をした電子ペーパーのバッグだ。

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パリファッションウィークでの2017年ISSEY MIYAKE春夏コレクション、ランウェイの様子。©2016 ISSEY MIYAKE INC.
白と黒の二色展開で発表され「EB」(Electronic Bag)と名付けられた今回のバッグは、それぞれ電子ペーパーが革の間に組み込まれている。ボタンを押すことで色が変えられると同時に、内部に組み込まれたセンサーにより、人の動きに合わせて色を変えることもできる。 2015年の夏、ISSEY MIYAKEのデザイナー宮前義之氏は、ソニーの杉山雄紀氏から電子ペーパーに興味はないかたずねられた。杉山氏はソニーで、ファッションのデザイン化に取り組むFashion Entertainmentsプロジェクトのリーダーを務めている。電子ペーパーは、電子書籍端末の画面などに使用されている非常に薄い表示媒体である。白と黒のインクを電気的に制御でき、図柄や文字を表示できる。「布以外の新素材をリサーチしているときに見せてもらった。将来的に色や柄が変わる服は必ず出て来るので、自分たちもチャンスがあれば動きたかったのもあり、使ってみたいと答えた」と宮前氏はそのときのことを話す。

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ISSEY MIYAKEデザイナーの宮前義之氏。写真:丸毛透
「やるからにはきちんと発表したい。そして、まだ事例のないことをやりたい」(宮前氏)と、既にソニーでも開発事例のある腕時計などの小物類ではない、バッグの開発を目指した。社内のバッグを専門とするチームに声をかけ、ソニー側も体制を整え、次年度のパリ・コレクションをマイルストーンにしてプロジェクトが始まった。ソニーのチームはバッグに必要な耐久性や防水性の実験を重ね、「白と黒とに色が変わる」以上の表現の可能性を探った。イッセイ ミヤケのチームはどのようにこの素材をバッグにデザインとして取り込むかを模索した。「イッセイ ミヤケは70年代から、日本のさまざまな素材や技術を見つけ、職人さんと向き合い、そこからオリジナルの服を作ってきた。きちんと素材に向き合い考えるプロセスが非常に大切」と宮前氏は話す。そこで今回も「電機デバイスだけれど、ひとつの素材」と捉え、手で扱いながら可能性を掘り下げた。まず試したのは「ぐしゃぐしゃにする」こと。内部のインクが壊れて漏れる表情に魅力を感じ、ひたすらアナログな方法に取り組んだ。折る、ハンマーで叩く、エンボス加工など、様々な手法を試し、ポンチで穴を開けるところに行き着いた。電子ペーパーはミシンで縫うと跡が残り液漏れをするため、パーツ同士の穴をつないでいく方法が有効だった。最終的に、一枚の革を細く紐状に裁断して、電子ペーパーの穴に通すことで、模様と形状が一体で作られることとなった。

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EB(Electronic Bag)を開発したイッセイ ミヤケとソニーのメンバーによる座談会の様子。写真:丸毛透
穴を開ける実験の過程でもう1つ、重要な発見があった。白と黒の2種類しか制御は難しいと考えられていたが、電極の数や電圧を変えることで、グラデーションが表現できたのだ。穴を開ける実験の際に偶然、静電気が内部に入り込んだことで独特な模様が生まれたことにヒントを得ることができた。ファッションの素材として未開拓な電子ペーパーに2社が突き詰めて向き合い「素材そのものの特性だけで表現の幅を広げる」ことに、協業のなかで成功した。

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人の動きやボタン操作により、グラデーショナルに色を変化させられる。©2016 ISSEY MIYAKE INC.
今回の商品化にあたり「制約が多かったからこそ見えた発見もある」という。「新しい素材には必ず制限がある。自由に使えるものからできるのは、誰にでも作れるもの。そういう意味で、問題があるというのは、チャンスだ。クリアすれば世の中にないものができる。そしてそれが今までイッセイ ミヤケが培ってきたこと。今回のプロジェクトも、最初の一歩」と宮前氏は語る。未来を垣間見せるバッグは、2017年4月には限定店舗で店頭に並ぶ予定だ。(角尾 舞/ライター)

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開発メンバーによる集合写真(右から3人目がソニー Fashion Entertainmentsプロジェクトのリーダー、杉上雄紀)。さまざまなプロトタイプにより試行錯誤が行われた。写真:丸毛透
パリファッションウィークでの2017年ISSEY MIYAKE春夏コレクションの映像が公開されている。「EB」は4分頃より登場

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