クローズアップ

アーキテクチュアル・シンキング アイデアを実現させる建築的思考術

居心地のいい場所は、「いい人」がつくる

シゴトヒト代表取締役・ナカムラケンタ氏

ブランディングデザイナーの西澤明洋氏が、建築系の出身でありながらも現在は建築系以外の分野で活躍するデザイナーやクリエーターなどにインタビューし、発想の原点を探っていく連載「アーキテクチュアル・シンキング アイデアを実現させる建築的思考術」。今回、登場するのは“生きるように働く人の仕事探し” をコンセプトに掲げた求人サイト「日本仕事百貨」などを運営するシゴトヒト代表取締役・ナカムラケンタ氏。日経デザイン誌面に掲載した同コラムの前編と後編を、1つにまとめてお送りする。

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ナカムラケンタ氏(なかむら けんた)●1979年東京生まれ。明治大学大学院建築学専攻卒業後、ザイマックスを経て、生きるように働く人の求人サイト「日本仕事百貨」を企画運営。2017年4月22日、誰もが映画を上映できる仕組み「popcorn」をスタート。著書「シゴトとヒトの間を考える(シゴトヒト文庫)」

西澤:ほかの求人サイトでは見られないようなユニークな仕事を紹介し、生き方や働き方までも考えさせるウェブサイト「日本仕事百貨」の運営で知られるナカムラさんですが、これ以外にも実に多くのお仕事を手がけています。そうしたさまざまなプロジェクトを立ち上げているナカムラさんの姿はクリエーターといえるのではと思い、今回の連載に登場していただきました。まずはメーンの日本仕事百貨の内容や、ほかにどんな活動をされているのかを改めて教えてください。

ナカムラ:まずは日本仕事百貨から説明しますね。これは文字通りいろいろな仕事を紹介する求人サイトです。単に求人情報を掲載するのではなく、我々が実際に求人先を訪問し、どんなお仕事なのか、何が大変なのかなど、ありのままを取材して掲載しています。転職するつもりがない人でも、「こんな仕事が世の中にはあるんだ」ということを知ってもらいたいというサイトです。転職の情報を求める人もいますが、読み物として閲覧する人も少なくありません。さまざまな仕事を掲載しているので、当初は転職なんて考えなかった人でも「こんな仕事があるんだ」と知って、求人に応募する方もいます。

西澤:求人サイトは、ほかにもあると思いますが日本仕事百貨では、どんな点を意識して構築しているのですか。

ナカムラ:大半の求人サイトはネットの特性を生かし、業種や職種別に検索しやすいようにしていると思います。でも、そうしたサイトでは“いいハプニングが起こりにくい”と考えています。ネットの特性でもありますが、いいキーワードを思いつかなければ、なかなか満足する結果にはたどり着きません。例えば、自分はこんな仕事を経験してきたとか、通勤時間は1時間以内にしたい、といった検索条件を入力した結果というのは、自分の想像を超える求人には出合えないと思います。自分の範囲内というか予想外の結果には結び付きにくいんですね。深掘りはできるかもしれませんが、横に広げるのが難しい。一般的な検索手法だけでは“斜め上に行く”ような出合いを得ることは簡単ではないと思うんです。

 日本仕事百貨には、一般的な業種や職種のほかにも、今まで自分が聞いたこともない離島での“管理人募集”といった仕事も掲載しています。そんな島があることも、そんな仕事があることも普通は知りません。しかし知れば「えっ」となる。サイトの検索機能に頼って求人の情報を提供するというより、雑誌をぱらぱらと眺めている感覚に近いかもしれません。そうして読んでいくと「えっ、こんな仕事があったのか」といった、いいハプニングや、いい出合いを起こしたいと考えています。

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西澤明洋氏(にしざわ あきひろ)●ブランディングデザイナー/エイトブランディングデザイン代表。1976年滋賀県生まれ。企業のブランドから商品・店舗開発など幅広いデザイン活動を行う

西澤:ほかにはどんなお仕事を手がけていますか。

ナカムラ:もう1つが「リトルトーキョー」と呼ぶ、いろいろな生き方や働き方に出合える場所の運営です。2013年に東京の虎ノ門でオープンし、2016年4月に東京の清澄白河に引っ越しました。ここではイベント「しごとバー」として、毎回いろいろな職業をしている方に“1日バーテンダー” になっていただき、お仕事の話を聞いたり、参加者と一緒にお酒を飲んだり、トークショーを開催したりしています。バーテンダーと言っても本当にお酒をつくってもらうのではないんですよ。“1日警察署長”みたいな感じです(笑)。夜の8時から10時くらいまで開いていても、参加者の皆さんはずっと話しています。これまで500回以上は開催しました。最初は何気なく参加した人が、ここで話を聞くうちに実際に転職したケースもありました。

 食事会の「ぐるりの食卓」も始めました。これは求人先の方など、さまざまな職業や地方の人と一緒に食卓を囲みながら、働き方や生き方などを話し合うイベントで、参加者は15 人くらいに絞っています。単なる職業説明会では表層的な部分しか分からないことが多いでしょうが、相手先と一緒にご飯を食べて、それぞれが取り巻くいろいろな状況を“ぐるり”と話し合う「場」を提供することで、互いの理解が深まるようにしました。ぐるりの食卓はリトルトーキョーで開催していますが、これをきっかけに参加者が相手先に見学に行くようになればいいですね。

 こうしたイベントも含め、それぞれの仕事や生き方を考える手立てになることで、いい転職に結び付くようにしたい。多くの求人サイトは「量」がポイントかもしれませんが、私たちは「質」で勝負したいと考えています。

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求人サイト「日本仕事百貨」の画面。求人情報を見せるというより、生き方や働き方を考えるためのサイトになっている(http://shigoto100.com/)
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東京・清澄白河駅から徒歩3分。向かいに銭湯、隣が中華料理店、屋上からは清澄庭園が見渡せる場所に「リトルトーキョー」と呼ぶ拠点がある。1階は、昼は食堂で夜はバーになる。2階と3階がイベントスペース。4階と5階は日本仕事百貨などを運営するシゴトヒトのオフィス

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