ゼミ活用

下関市立大学 経済学部 鈴木 陽一 ゼミ

Case 2 Teacher's voice

下関市立大学 経済学部

鈴木 陽一 准教授

Profile

下関市立大学経済学部准教授。都市銀行勤務などを経て上智大学大学院博士後期課程満期退学 。ロンドン・スクール・オブ・エコノミックス客員研究員(2010-2011年)。専門は国際関係論。教育では国内志向、ローカル志向の強い地方公立大学経済学部の学生たちを相手に悪戦苦闘中。

※役職名等は取材時点のものです。

ゼミの最中に「日経ビジネス」を回覧すると、
学生たちが目を皿のようにして読み始めた

-「日経ビジネス」をゼミで活用し始めた時期を教えてください。

 きっかけは2年前(2015年)、3年生で「日経ビジネス」を回覧すると、学生たちが「面白い!!」と言って目を皿のようにして読み始めたことにあります。

 十数年来、3年生のゼミでは、アカデミックな読み物を読む傍ら、最初に10分程度、新聞や雑誌の記事を紹介する時間を設けてきました。アカデミックな知識の習得だけではなく、ビジネスの世界の現在を知る必要があると考えたからです。その際に「日経ビジネス」の記事も紹介してきました。

 そうしたこともあり、雑誌そのものをゼミの時間に回覧したのですが、とにかくその反応がよかったです。特集の題名も学生の気を引く命名になっていますし、AI、自動運転などといった先端のトピックについて他誌に先駆けた記事が載せられていたことも大きかったと思います。

 「日経ビジネス」を読むゼミを新たにつくってほしいとの要望が出されました。そこで、やはり私が担当する2年次の半期のゼミ(カリキュラム再編により2016年度から開講)に導入することにしました。

 ゼミの趣旨としては、ビジネスの世界の現在とその背景を知るとともに、雑誌などから情報をとる訓練をするということになります。

①世のなかにはどのようなビジネスがあり、どのような仕事があるのか、ビジネスの最先端はどのようになっているのか。現在の学生の多くはそうしたことを知らないまま就職活動に入る傾向にあります。通常、ゼミの教育はアカデミックな知識の習得となります。これは大学教育のコア部分にあたり、必須の部分です。ただ、ビジネスパースンを育てることを考えると、現実のビジネスの世界の知識を習得する場をもっと提供することも必要と考えました。

②以前は新聞を読むのは当然という教育を受けてきましたが、現在の学生の多くはスマホで情報をとる傾向にあり、そうした習慣を習得していません。そのままでは社会に出たとき、そのことは大きなハンディキャップになるかもしれません。新聞・雑誌などからビジネスの情報をとるというビジネスパーソンとして当然身につけるべき習慣を身につける必要があると考えました。

 アカデミックな教育とビジネスの世界とのインターフェイスを提供するというイメージになります。

-ゼミでどのように「日経ビジネス」を使っていらっしゃるか、具体的に教えていただけますか?

 各回、毎週金曜日深夜までに教員から受講者にメールで必読箇所(3箇所程度)の指定とその背景の説明を送り、週末、これを参考に雑誌を読んできてもらったうえで、当日次のように進めています。

前半

1 各自が関心を持った記事について、書いてある内容とともに自分の意見を述べる短い口頭発表(1分程度)をする。 「社長をトイレの前で待っていて、1分で口頭プレゼンする」ことを念頭に置くよう指導しています。
2 同一の記事を読んできた学生に当該記事について意見のみを発表させる。
必読箇所を発表してもよいが、多くの学生は別の個所を発表した。
3 解説と意見交換。解説する際には記事の背景についてもなるべく話をする。また、その際には、適宜『業界地図』(ポケットマネーで買って学生に配布。別の情報源も必要と考えて東洋経済のものを使用)を見て、業界全体の状況も理解するように努める。意見交換は全員で行う。学生から意見を募っても出されないことが多いので、こちらから理解を深めるための質問を適宜行う。

後半

 グループをつくり、過去の号の記事について、当番グループがパワーポイントなどを用いてより掘り下げた発表をする。その際には、教員から出した予習メールを参考にしてもらう。

 そのほか、雑誌から離れ、各グループに新しいビジネスを提案してもらう回、自分たちが興味を持ったこと(たとえば、ワイン、将棋など)についてビジネスの観点から発表してもらう回なども設けた。

パワーポイント画面

-「日経ビジネス」をゼミで活用することで、学生の皆様に変化はありましたか?

 自分たちの育った世界に留まろうとする志向が強く外の世界を知ろうとしない、いわゆるマイルドヤンキーという言葉がぴったりの若者たちです。そうした学生だからこそ「日経ビジネス」を読んでほしいのですが、彼らにとっては高価な教材です。そのため、私が開講するにあたっては教務委員に随分議論してもらったうえで、ゴーサインを出してもらいました。その際、必修のゼミに高価な教材を導入することについて強い懸念も出されたようです。

 案の定、昨年度のゼミの際には、シラバスに受講にかかる代金が明記され、それを知ったうえで受講しているにもかかわらず、購読を拒否しようとする学生が現れました。

 こうした逆風のなかゼミを開催しましたが、結果として学生には非常に良い刺激となったようです。

誌面
1.学生たちがまず示した反応は「とにかく雑誌が面白い、知らないことを知ることができて面白い」というものでした。

 ほかに比べて課題が多いゼミなので、学生はつらいかと思っていたのですが、とにかく雑誌が楽しいという意見が多く聞かれました。学生にとっては「こんなことが起きているのか!!」という驚きがあったようで、また内容が具体的でわかりやすかったようです。雑誌を読んでいるのを友人が見て「そういう雑誌を読むゼミがあることを知っていたら、自分も選択していたのに」と言われたという学生もいました。もっと読まれていい雑誌と確信しました。

2.学生たちの勉学へのモテベーションが向上していることにも気づかされました。

 いわゆるマイルドヤンキーに「グローバル人材にならないと取り残されるぞ!!」と言っても、あまり効果がありません。反発したり、無視したり、やる気をなくすだけです。その点、「日経ビジネス」を読んで、積極的に勉強するとどういう世界が待っているのか知ることができたのは大きかったと思います。世界のビジネスがどう進んでいるのか、どういうチャンスがあるのか、具体的に知ることができました。「フロントランナー 小なれど新」なども人気で、起業に関心を持つ学生も現れました。また、広告も勉強になりました。たとえば6000万円の腕時計があるなんて知らない学生は多いのです。

 勉強した先にどういう世界が待っているのか。自分たちの教育の不十分なところがわかった気がしました。

3.発表を何度も繰り返すことで学生たちのプレゼンの能力は眼に見えて向上しました。

 短時間の口頭発表の能力はめきめきと上達しました。大学教育では短時間にまとめて発表する訓練があまりされないので、よい機会になったようです。社会に出てから役に立ちそうとの感想ももらいました。